ルイス・サッカー「 HOLES」

 全米図書賞、ニューベリー賞など多くの賞を取った作品です。映画にもなっており、amazon等にもすでにレビューが沢山あるので今更私が紹介するまでもないかもしれませんが、それでも勧めたい一作です。私がこの本を読んだのは大学の授業の折でしたが、この本はすごい、と思いました。何がすごいかって、これだけよくできた話がアメリカでは9~12歳向けの児童書として売られているそうだというからです。

 

 主人公は上から読んでも下から読んでも同じ名前のStanley Yelnatsという少年です。Yelnats家は曾曾祖父の時代から代々呪われた一家で、Stanleyも学校でいじめられる毎日。ある日彼は犯しても ない罪で荒野の果ての少年更生施設に送られます。土地がからっからに乾いた灼熱の地でのStanley達少年の仕事は毎日1つ、大きく深い穴を掘ること。 施設の女所長のもと彼らはひたすら穴を掘り続けますが、ある時Stanleyは彼女が何かの目的をもって自分たちに穴を掘らせているらしいということに気 づくのです。

さらに話の軸はStanleyの他に、呪いの大元である一代目Stanley Yelnatsや、100年前のまだ湖が湧き緑豊かで人が住んでいたCamp Green Lakeの地へと移ります。小分けにされたチャプターごとにこの3つの物語が交互に進んでいき、何故Yelnats家が呪われることとなったのか、女所長が穴を掘らせる真の目的は何かが徐々に暴かれながら、ラストへ向けて話が一つに集約されていきます。

とにかく伏線回収がすごい。ラストに向かうにつれて「ああ、あれはそういうことだったのか」という驚きやひらめきが次々に起こり読者を楽しませてくれます。またもう一つの見どころはStanleyの成長です。呪われているということもありますが最初は太っちょで勉強もさえず根暗だった彼が、施設で出会った他の少年たちとの出会いを通して友情を知り、心身ともにたくましくなっていく姿に注目です。物語はどんでん返しののち大団円に終わり、ちょっとできすぎじゃない?とも思えるほどですが児童書としては陳腐さはまったくなく、すっきりとした気持ちで読み終えられます。洋書初心者にも最適の一冊です。

幸田敦子訳の日本語版も出版されていますが、単語もさほど難しくないので英語版を先に読むことをおすすめします。作中では言葉遊びと思われる点がいくつかあるのでそれを探しながら読むと楽しさも倍です。(マツバラ)

 

 

『HOLES』
Louis Sachar著 Yearling; Reissue版 1998年8月