星新一「おーいでてこーい」

今回紹介するのは星新一のショートショート集「おーいでてこーい」です。この作品を知らない人でも星新一については知っている、もしくは著者の他の作品を読んだことのある人もいるかもしれません。星新一は日本を代表するSF作家であり、日本でのSF小説発展に大きく貢献した人物で、ショートショートと呼ばれる十ページほどの短い小説の形態を生み出し、書いたショートショートの数は1042編にも上ります。本書「おーいでてこーい」には多くのショートショートから人気投票で選ばれた上位五編を含んだ十四編のショートショートが収録されています。

 

前回、前々回と紹介してきた本は二冊とも長編の小説でした。このホームページを見ている人の中には長い文章を読むのが苦手だという人もいたかもしれません。今回は紹介する「おーいでてこーい」は、普段小説を読むことのない人や長編小説を途中まで読んでも疲れて読むのをやめてしまうような人にピッタリの一冊です。ショートショートの魅力はその短さによるテンポの良さと、あっと驚くようなオチが用意されていることであり、さらに星新一の描くショートショートは専門である宇宙や近未来を舞台としたSFから昔話を意識した寓話めいたものまで幅広いのが特徴です。

 

本書収録の十四編から、表題作である「おーいでてこーい」を例として紹介します。これはある村に突然穴が出現するという話です。その穴は深く、「おーいでてこーい」等と大声を出しても跳ね返ってこず、石を投げてみても何の反応もない。人々はその穴をどうするか考えた結果、都会で出たごみを捨てるのに利用し始めるがある時空から「おーいでてこーい」と声がして石ころが一つ降ってくる……。作品はここで終わってしまいますが、その穴は未来とつながっていてこれから大量のごみが空から降ってくるというのが想像できるというわけです。この作品はたったの八ページしかなく、五分もあれば読むことができるので長い文章を読みたくない人でも飽きずに読むことができると思います。他の十三編の内容については落ちの全てをばらしかねないので控えますが、どの話も短くユーモア(時にはブラックな)にあふれた作品です。

 

私が著者の本に出会ったのは小学校四年生の時でした。当時の私は長めの小説を読むのが苦手で、最初の方だけ読んで途中で本を読むのをやめることがよくあり、本を読むのがあまり好きではありませんでした。しかし、著者のショートショートを初めて読んだとき、その短さと発想の面白さに衝撃を受け、学校の図書館にある著者の本をすべて読みつくしてしまいました。著者のショートショートのおかげでそれまで長くてつまらないだけだと思っていた小説を初めて面白いと思うことができ、それから色々な本を読むきっかけとなりました。「おーいでてこーい」は小学校の図書室の著者の本を読みつくした後で私が初めて買ったショートショート集です。この本が小説の読む楽しさを知ってもらうきっかけとなれば幸いです。

(西蔭健作)

『おーいでてこーい』 星新一

講談社青い鳥文庫 20013