松田青子「はじまりのはじまりのはじまりのおわり」

あけましておめでとうございます。
今年もよろしくおねがいします。

新年最初は明るいものを、と思ったけれど年末年始わりとヘビーなものが続き選びあぐねていましたが、年明けに届いてもうこれ以外にない!と即決したのがこの作品です。
本の好きなカタツムリのエイヴォンが、自分も本の中のような冒険がしたい、とアリのエドワードとともに「冒険を探すための冒険」の旅に出て、色々なできごとに出会い、さまざまな発見をして...という言ってみればありがちなストーリーなのですが、これが不思議なおもしろさなのです。

たとえば、エイヴォンが話すこんな一節。

「世界で一番たいせつなことは冒険なのに、今までぼくは冒険できなかったし、これからもそう。そう、きっとそうなんです。本に出てくるみたいな冒険ができないんだったら、ぼくは死ぬまで不幸なカタツムリのままだ。うわー、どうしよう!」

何だこいつは、と笑いつつ、もうエイヴォンの虜です。
アリのエドワードはですます調のすました話し方で、コンビのバランスも絶妙のバディ小説としても読めます。モノクロの挿絵といい、かつて読んだ絵本、児童書が蘇ってくるようでした。私は「クマのプーさん」(岩波文庫版)と、「スターウォーズ」のC3POとR2−D2を思い描いていましたね。

実はこの本、訳者に惹かれて注文したのでした。
翻訳の松田青子さんは今月初の単行本が出るという新人作家ですが、文芸誌「早稲田文学」に掲載していた小説が衝撃的で、気になって検索していたら出て来たのが、この本だったのです。

児童書?翻訳?と謎が多かったのですが、読んでみて大正解でした。
小説の方は、社会で働くことの難しさ、生きにくさなどを鋭い表現で描くような作品でしたが、
この「はじまりのはじまりの」は、全く違い、かわいらしくやさしく、でも深いものが感じられるいいお話でした。
先月「飛ぶ教室」新訳版の紹介もありましたが、訳者によって本を選んでみると、意外といい作品が発見できるかもしれませんね。

はじまりのはじまりのはじまりのおわり
小さいカタツムリともっと小さいアリの冒険

著:アヴィ著, イラスト:トリシャ・トゥサ, 翻訳:松田青子
福音館文庫 2012年