岩貞るみこ『青い鳥文庫ができるまで』

大人気児童文庫シリーズ「青い鳥文庫」の、原稿から本になるまでの一連の流れが描かれた小説です。


著者はノンフィクション作品を中心に手がける作家ですが、自分の本を出すときに東日本大震災がおこり東北の製紙工場が被災、印刷用紙が足りない、という事態に直面したことがきっかけで、この作品を書いたとのこと。出版社が必死に用紙を手配し、印刷や製本所がぎりぎりの状態で本を作り、販売部宣伝部が調整し、最終的に書店を経て読者の元に届けられたということから、「こうした人がいて初めて、本が読者のみんなに読んでもらえるのだと痛感」して、4ヶ月の取材を経てこの本になったといいます。

 

累計200万部突破目前の人気シリーズ「白浜夢一座がいく!」を担当する編集者モモタが作家綾小路さくら先生に新作の原稿を依頼するところから始まり、校閲、イラストやデザイン手配、営業や販売担当との交渉、校正、印刷、流通、などが順を追って登場します。仕事の内容、手順などの記述は、専門用語も多用され、かなりリアル。カバーの囲う方法とか、本の平台印刷の「折り」の作り方とか、普通知らないでしょ!とか思いますが、こういう業界内部の話って意外と面白いですよね。今年本屋大賞を受賞した『舟を編む』は辞書編集の話でしたが、こちらはもっと広範囲に出版全体を網羅しています。出版業界や本に興味のある人にも、勉強になりそうです。

実際の工程も楽しめるのですが、小説として書かれているので、主人公モモタを中心にさまざまな人との関係や事件、トラブルなども出てきます。校閲担当の教授、お金の計算を担当するマダム、本のデザインをするビッグマザーなどわかりやすいキャラクターだったり、早いテンポで話が展開していくのは、青い鳥文庫読者にも読みやすそう。後半、校了(最終的な締切)間際に、ストーリーの決定的なまちがいを見つけて顔面蒼白になるというシーンで、小説の詳細が書かれていないので、まちがいの重大さがピンと来ない、というところは少し残念ではありましたが。

青い鳥文庫そっくりのカバーデザインですが、ハードカバーで版型も大きく、児童書分類のようです。そのへんの出版方針も知りたくなってくるような気がします。

『青い鳥文庫ができるまで』

岩貞るみこ 講談社 2012年7月