アンネ・フランクをたずねて

ナチスの迫害によって、若くしてこの世を去ったアンネ・フランク。彼女を敬愛し、「アンネの日記」を愛読書としてきた著者が、そのゆかりの人々や土地をたずねて書き下ろしたノンフィクションです。

 

本書は「アンネ・フランクの記憶」(小川洋子 角川文庫/1998年刊)をもとに、同著者によって少年少女向けに新たに再編されました。 再編本ということで、取材時期の関係により、現在は故人となったアンネゆかりの人々も登場しています。しかし、本書を刊行するにあたって著者の小川さんは、2010年にアウシュビッツを再訪し、それをまとめたものが若干ながら加筆されています。

隠れ家生活という辛い毎日を前向きに生きたアンネ・フランクという一人の少女を、ナチスの暗く、残酷な時代背景と共に追っていきます。要所に「アンネの日記」にある言葉を用いつつ、小川さんならではの女性らしい視点でアンネを分析しつつ話は進みます。


取材で訪れたゆかりの人々へのインタビューや、各所へ足を運び、生の空気を感じたからこそ出来る貴重なレポートは大変意義のあるものです。思わず顔を背けたくなるような歴史の惨状にも、決して目を背けずに受け止めるという著者の姿勢がとても印象的に描かれています。そして、読者もそれを史実として受け止め学ぶことによって、たくさんのことを本書は訴えかけてくれると思います。

原本の「アンネの日記」と一緒に読むのがベストなのかもしれませんが、本書単独でも十分楽しめる内容になっています。それは本書が「アンネの日記」のガイド本的役割を果たしているとともに、ナチスやその時代背景に関する優れた資料としての役割も兼ねているからです。わかりやすい言葉で書かれているので、「アンネの日記」の導入本という形で本書を活用するのもいいかもしれません。

(kawaguchi)


アンネ・フランクをたずねて』
小川 洋子 (著), 吉野 朔実 (イラスト)  角川つばさ文庫  2011年12月