【特集:2011年のベスト本】『この世のおわり』

今年の始めに一度レビューをアップしたのですが、1冊となるとこれかも...ということで再掲します!

 

キリスト教の終末論を柱に、この世の終わりを食い止めようとする修道士と吟遊詩人、不思議な少女の3人がヨーロッパを旅する、壮大な物語。『漂泊の王の伝説』で日本でも注目されたスペインの女性作家、ラウラ・ガジェゴ・ガルシアが20歳の時に書き上げたデビュー作です。

主人公たちは、世界を救うために必要な3つの宝石「時間軸」を探す旅に出ますが、それを阻む闇の秘密結社や強欲な権力者との手に汗握る攻防を繰り広げます。か弱く書物に夢中で修道士のミシェルと、たくましく世事に長けている吟遊詩人マティウス、独立心旺盛な少女ルシアという3人の絶妙なバランス、歴史ファンタジーや冒険物語としての面白さなどはもちろんですが、非常に魅力に感じたのは、懐の深さ、柔軟性のようなものです。

本作も、先に翻訳された『漂泊の王の伝説』もスペインの児童文学賞「バルコ・デ・バポール児童文学賞」受賞ということで、日本でも“名作児童文学”的な扱いなのか、ハードカバーA5版の児童書サイズで、格調高い表紙になっているのが、少し残念。手に取るハードルも高そうですよね。主人公含めキャラクターが秀逸で、せめて表紙でイラスト化したらいいのに、と思います。マティウスの連れているオオカミ犬シリウス含め、主人公たちの姿は、ライトノベル好きな日本の若者にも受けそうな印象です。

(makio)

 

『この世のおわり』

ラウラ・ガジェゴ・ガルシア作 松下直弘訳(偕成社)2010年10月