初恋素描帖


 雑誌『セブンティーン』を見ていたら、ブックコーナーに紹介されていた『初恋素描帖』。3冊のおすすめ本はコミック、イラスト集とこの本で、小説はこれだけ。女の子が読みたそうな小説って数少ないんだなとあらためて思います。


 この本は2008年に単行本で刊行、この夏に文庫化されました。どちらも「ソラニン」の浅野いにおがカバーイラストを手がけていますが、文庫はより漫画タッチになっていて、今風です。中にも登場キャラクターや恋の相関図の浅野イラストがあって楽しめます。

 

 登場するのは中学2年生で、テーマは初恋。今の子にも入りやすい装丁で、まさにリアル中学生向けの本にも見えますが、子ども向けとして書かれた作品ではありません。中学2年の1クラス、20人の恋愛がそれぞれの一人称で語られ、クラスの人間関係や心の中の葛藤など、きれいばかりじゃないものが徐々に見えてくる、深い味わいがあります。

 著者が文庫あとがきで中学時代の“特別さ”を書いていますが、その思いをあたため描かれた作品なので、大人にも共鳴するのではと思います。

 でも主人公中心の友情や恋愛だけではなく、目立ない子も嫌いな子も、クラスすべての子が等しく描かれている小説というのは、ティーンズには意外と新鮮かもしれません。『セブンティーン』評の「同クラの話したことないあのコも、こんな恋をしてるのかなぁって思うと、親近感わいてくるよね」は、まさにそのとおり。本好きな子もそうじゃない子も、何かしら感じる作品だと感じます。                     

      (makio)

『初恋素描帖』

豊島ミホ著 メディアファクトリー 2011年8月(文庫版)