ぼくがバイオリンを弾く理由

 第1回ポプラズッコケ文学賞奨励賞受賞作です。スカイエマ挿画つながりで探したら、文学賞受賞作にたどりつきました。

 

 自信満々で臨んだバイオリンコンクールで落選、バイオリンをやめようと決意した小学5年生のカイト。寄宿していた神戸から自宅のある広島に戻り、さまざまな出会いを通じて成長するひと夏の物語でした。

 コンクールのために派手な演奏をするライバルへの抵抗、家族からひとり離れてのレッスン生活、ずっと一人っ子だったのに兄弟が生まれると知った驚きなど、少年のたまった不安が爆発するに十分なはじまりでした。

 

 会場を飛び出して戻った広島駅で父親と出会い一緒にお好み焼き屋に入るのですが、お好み焼きを焼く職人技の描写が続き、夢中で食べるうちに不安がだんだんとほぐれていくという場面が印象的でした。緊張感あふれる神戸からゆったりした広島の夏へと、スムーズに展開していく転換点となっていました。

 

 その後の、元同級生のサッカー少年、いとこや近所のおばあちゃん、音楽家たちとの出会いは、どれもカイトに寄り添う、いい話です。広島という背景なので、戦争や原爆にまつわる部分もあり、そこも成長のきっかけになっています。少しうまく行き過ぎ?という気もしないでもないですが、前向きで爽やかになれる読後感でした。

(makio)

『ぼくがバイオリンを弾く理由』

西村すぐり著

ポプラ社 2008年10月