ピアチェーレ 風の歌声

 公募新人賞の、第8回日本児童文学者協会・長編児童文学新人賞受賞作品が単行本化、その年の第21回椋鳩十児童文学賞を受賞という華麗なデビューを飾った作品です。

 

 その背景や、表紙、装丁、タイトルなどから正統派の児童書、という印象がありますが、作品自体は意外とライトな読み心地でした。

 母親が亡くなった後、父親は別な家庭を持ち、祖父母、叔母、弟と暮らしている中学生、嘉穂。父にも、一緒に住む家族に遠慮して、部活も習い事もせず、すすんで手伝いをする、いわゆる「いい子」ですが、無理をしている自分にも満足できないでいます。

 

 あるきっかけから声楽に目覚め、才能を認められ先生について習い始めてから、自分自身も変化していく、という成長物語です。

 歌の才能に目覚め、周りも驚き、その音楽に圧倒されていく、というのは、漫画でも最近多くみかけますが、この作品もそれに通じるものを感じました。絵や文字という二次元で音の様子が再現され、それを読み手が感じる、という読み方に慣れているティーンズにも受入れやすいのでは。

 

 友達の片思いや、その相手であるピアノの才能ある男子、その母親である声楽の先生、など登場人物もイメージしやすく、ちょっと少女漫画風なイメージもあります。ハードカバーでまじめそう、と思わず気軽に読んでほしい作品でした。

 

『ピアチェーレ 風の歌声』

にしがきようこ 小峰書店  2010年7月