皿と紙ひこうき

 

 第51回日本児童文学者協会賞受賞作品です。

 

 著者の作品は初読ですが、『卵と小麦粉とそれからマドレーヌ』『レモン・ドロップス』などのタイトルから、若手の作家の方だと思っていました。そして、読み終わった後もそのイメージは変わらず。爽やかで、初々しい少女の物語だったからでしょうか。

 九州の山奥、陶芸家の小さな集落で生まれ育った由香は、ずっと変わらない日々を家族と幸福に過ごしている。高校に入ってこれまでとは違う世界を知り、新たな人々と出会い、いろいろなことを考え、感じるようになる。そんなお話です。変わることのない皿と、飛んでいく紙ひこうき、タイトルも象徴的ですね。

 あとがきで、舞台の大分県日田市はテレビCMで知り、その風景のなかで物語を書きたいと取材したとありました。土地の言葉や陶芸の作業のようす、街並などとても自然に描かれ、作者に縁のある土地なのかと思っていたのですが、そういわれてみれば、1日3本だけのバス、「皿山の子」という呼び名、家族の強い絆などの心温まる描写は、作者が心惹かれた風景だからこそ出来たお話なのかもしれません。

 由香の親友、絵里の男子への憧れや、部活の先輩の少し大人びた姿、東京からの転校生伊藤卓也への視線など、この年頃の女の子なら誰でも、どの時代でもくすぐられるような要素がきれいに収められている印象です。少し余裕のあるとき、夏休みとかに、家や図書館でのんびり読むのにぴったりな気がします。

(神谷巻尾)

 

『皿と紙ひこうき』

石井睦美 講談社 2010年6月