ピアニッシシモ

 講談社青い鳥文庫の中学生向け、「Yシリーズ」第一弾です。

 

 人気のYA作家の作品を、イラスト入り、ルビ入りで青い鳥文庫にパッケージ、小学校高学年〜中学生の女の子が手に取りやすい装丁になっています。黒魔女さんや若おかみで青い鳥ファンになった女の子たちに、次に読んでもらいたいシリーズとして期待が感じられます。

 本書は講談社児童文学新人賞でデビューした著者の2作目で、2003年に第33回児童文芸新人賞を受賞した作品です。

 

 ごく普通の中学3年生松葉と、裕福で美人、ピアニストを目指す紗英、2人の少女はピアノが縁で出会い、お互い急速に惹かれあいます。接点のない2人ですが、それぞれ家庭環境に反発しています。松葉の両親は家族思いで明るい家庭を築いているようですが、父が食玩コレクター、母がブランドや流行りもの好きで、紗英の家は母も祖母も叔母も男運が悪く女系家族で暮らし、紗英のピアノに過度の期待を抱いています。大人たちの自己中心的な言動がこれでもかと描かれ、大人の読者としては肩身が狭い思いです。

 他にも学校の先生や芸術家気取りの若者など、身勝手な大人が登場し、中学生は傷つけられます。嫌な大人やいじめなどのテーマって、実際のところティーンズ読者はどんなふうに受け止めるのかな、と思い中学生の娘に聞いたところ「ただ面白いだけなんじゃ?」とのこと。意外と淡々と読んでいるのでしょうか。


 物語は、紗英の恋愛を機に、松葉自身の行動も変化し、それぞれに家庭や学校と折り合いをつけていきます。成功や感動といった単純な結末ではなく、葛藤もあり読者自身の読み方も問われるような終盤は、それまでの青い鳥読者には初めての体験かもしれず、読書の幅が広がっていくのではないでしょうか。                        

(神谷巻尾)

 

 

『ピアニッシシモ』

梨屋アリエ 講談社青い鳥文庫 2011年6月(初版2003年)