ラスト ラン

 

 『魔女の宅急便』の角野栄子は、今年作家デビュー40周年とのこと。本書は著者の自伝的小説で、初の一般書とのことです。

 

 ただし“ノンフィクション・ファンタジー”とあるように、印象としては『魔女宅』のようなファンタジー児童書。著者の回顧的なお話かという予想の枠を大きく超えた、読み応えある作品でした。

 

 主人公のイコさんは、ファッションデザイナーを引退した74歳の独身女性。残された時間に何かやろうとバイクを購入、幼い頃死別した母親の写真を思い出し、母の生家に旅することにします。たどり着いたその家は、空き家のはずなのに、12歳のふーちゃんと名乗る女の子が。しかも他の人には見えないのに、イコさんだけには見える。「行っちゃ、やだ」というふーちゃんを残しておけず、バイクに乗せて、ふたりのツーリングが始まります。

 みずから「ゆうれいなの」というふーちゃんは、当時お気に入りのワンピースを着て当時の世界にいるかと思えば、今どきの女子高校生の言葉づかいを覚えていたり、将来自分が成長した時の記憶も断片的に出てくるなど、あの世に行けず中途半端なところに存在しているというかんじが伝わってきます。

 

 ふーちゃんや旅の途中で出会うゆうれいたちと接するイコさんが、困惑したりぼやいたりしながら、現実とあちらの世界とをバランスをとる姿もなんとも楽しい。冒頭からテンポよく物語が進み、しかも予想の枠を超える展開がいくつもあり、最後まで引き込まれます。

 著者インタビューで「12歳から74歳まで読んでほしい」と語られていましたが、どの世代も、特に女子にはツボのポイントがありそう。もっと下の、小学生でも十分楽しめそうです。装画が「サマー・ウォーズ」のコミカライズを手がけた杉基イクラ。長編アニメを予感させるような表紙です。

(神谷巻尾)

『ラスト ラン』

 角野栄子(カドカワ銀のさじシリーズ)2011年1月