宇宙のはてから宝物

 今年度児童文芸新人賞受賞作です。

 

 主人公は小学6年生の女の子、あかり。「好きなものは、いちごキャンディーと、ぞうのぬいぐるみのスージーと、由宇。由宇はあたしのことを宇宙一わかってくれる男の子」とか、「多感な女の子のあかりと、彼女をそっと見守る由宇の心温まるお話」などの紹介文をみると、夢見がちな友情物語かと想像しましたが……そのイメージとはかなりギャップのある、ダークな側面のある作品でした。

 宝物箱やぬいぐるみを手放せないというのは、6年生にしては幼すぎる設定ではと思ったら、実はふたりともかなり深刻な家庭環境にいました。

 あかりの母親は「心の病気」で外出ができず、由宇の母はアルコール依存で夫婦喧嘩が耐えない。そこから逃げたり、反抗したりする術もないふたりは、なんとか折り合いをつけるために心のよりどころとして宝物や、想像の世界を持っている。その状況がわかるにつれ、いちごキャンディーとか、ぞうのスージーなどへの見方が変わってきます。

 ただ、親への複雑な心情、クラスメートや教師に対するいらだち、またそのなかで見つける楽しみなど、ふたりのストレートな行動や表現が子どもらしく、陰湿さに向かわないところが好感が持てました。

 タイトルや、こみねゆらのほのぼのイラストで手に取ると、裏切られた感はあるかもしれませんが、別の意味で収穫はあると思います。

(神谷巻尾)

 

「宇宙のはてから宝物」

井上林子作 こみねゆら絵

文研出版 2010年12月