愛をみつけたうさぎ

写真?と思うような表紙ですが、絵なんです。

 

文章はケイト・ディカミロさん。絵はバグラム・イバトーリーンさん。出版社はポプラ社です。著者のディカミロさんの作品はAmazonの紹介文にもある通り「ねずみの騎士デスぺローの物語」が有名らしいです。「デスぺロー」は2004年のニューベリー賞を受賞したとか。今度読んでみなくっちゃ。


うさぎの人形って珍しいですよね。それもそのはず、おばあさんから孫へのオーダー品なんです。ですが、実のところ、このうさぎのエドワードはおばあさんを失望させています。理由ははっきり書かれていませんが、理由はその部分まで読み進めた人ならわかるはず、です。この<人形のあらまほしき資質>みたいなものについては、ルーマー・ゴッデンも物語で書いていますね。(1冊でなく数冊に共通で書かれていたような?)

 

訳者のあとがきによると、人形の物語ということで「ピノキオ」を思い出したようですがワタシは内容からなんとなく「100万回生きたねこ」を連想しました。愛を知らない傲慢さと、愛を知った後の悲しさの対比からじゃないかなと思っています。
著者は日本の読者へのあとがきで「旅についての物語」であり、「心の旅についての物語でもあります」と書いていますが邦題のように「愛を見つけ」るまでの物語、というのが読んでいてしっくりきました。この邦題、うまいなー。ちなみに原題はサブタイトルの「エドワード・テュレインの奇跡の旅」です。

そして、この愛って普遍的な愛ともとれますが流れ的に、とっても恋愛のムードに近い感じがするんです。ワタシだけかな?


他の世界を知らない幼い時期、保護してくれる人たちの無償の愛を感じつつ、それを当たり前と思いなんら関心を持たない傲慢さ。やがてとある事故により、今までのものをすべて手放したままひとりぼっちになってしまう。新しい人たちとの出会い。愛されることを嬉しく思うが、相手の思い込みなど、気に入らない部分も受け入れねばならない。自分の意志ではない別れ。そしてさらなる新しい出会い。交流する人が増え、内面が豊かになっていく。けれど出会いと愛と別れがくりかえされることで心がくだけそうな悲しみを何度も味わい愛などいらないと諦めようとする。しかし、歳月がたつうち、心を開いて待つことをおぼえやがて運命の出会いがやってきた…。


どうでしょう、こんなふうに書くと、とってもロマンスな感じしませんか?

主人公はうさぎの人形(しかも男性)なので、読んでいるときは彼の感覚に同調して恋愛なんて思いもしませんが読み終わって思い返しながら、ブログにどうやって書こうかな、なんて感想を構築していたらああ、これって、恋に通じる愛の物語なんだ…と思い女の子や、女の人に読んでほしいなぁとしみじみ感じたのでした。

本の作りや挿絵も女性向けかな。写真と見まごうばかりの精密かつ繊細な絵はカラーもモノクロも存在感たっぷり。豪華な造りで、ふんだんにカラーの挿絵がはさみこまれています。きれいで雰囲気あってクラシックな懐かしさにあふれていますよ。物語を読む前に、挿絵だけパラパラと眺めるのもステキです。カラー挿絵に物語の該当部分がキャプションとしてちょっと書かれてるのを見てそうそう、昔の子どもの本ってこんなだったよねぇと思いだされる方もいらっしゃるのでは?

読み終わった後、またあらためて何度もページを繰りたくなるそんなムードあるこの作品。人形が好きな方も、そうでない方も一度手にとってみていただきたい1冊です。

(しろいまちこ)

『愛をみつけたうさぎ―エドワード・テュレインの奇跡の旅 』

ケイト ディカミロ (著), バグラム イバトーリーン (イラスト)子安 亜弥 (翻訳) 

ポプラ社 2006年