一億百万光年先に住むウサギ

 新年最初のレビューです。今年は卯年、ということで「ウサギ」が出てくる小説にしてみました。昨年残念なことになってしまった理論社の、YA単行本です。

 

 主人公は中学3年生の翔太。親の事情で移り住んだ湘南の地で、友人や回りの大人たちとのさまざまな交流や恋愛をとおして、成長してゆく青春小説です。冒頭、恋が実る伝説や洋館に住む老教授などロマンチックな設定で始まります。不思議なウサギが登場したりして、これはSF? と思うと、友人が巻き込まれた盗難騒動の犯人探しといったミステリーもあり、後半は失踪事件もからむラブストーリーになり、となかなか盛りだくさんです。

 とはいえそんな慌ただしさはなく、むしろゆったり時間が流れていて、少し前の時代の話?と思わせるような雰囲気です。横浜、鎌倉、江の電沿線など湘南特有の地域感がただよい、親世代からの付き合いや古くからの顔なじみ、ジャズが流れる喫茶店など、作者が気持ちよく書いているような印象を受けます。

 タイトルの「一億百万光年先に住むウサギ」は、親世代が高校生だった時に作ったという童話作品。この逸話が全編を通して顔を出しています。宇宙から来たウサギが、恋をかなえるために星を磨く、というなかなかかわいらしいお話なのですが、なんとこの話がスピンアウトして絵本になっていました。

 これも合わせて読んでみたいですね。

(神谷巻尾)

『一億百万光年先に住むウサギ』

那須田 淳 (理論社  2006年)

 

『星磨きウサギ』

那須田淳/著   吉田稔美/絵 (理論社 2007年)