【特集:今年のベスト本】『どろんころんど』

 振り返ってみると今年は「アリス」が元気な年でした。ティム・バートン監督による映画『アリス・イン・ワンダーランド』の公開は記憶に新しいです。さらに角川つばさ文庫では、新訳版『ふしぎの国のアリス』『かがみの国のアリス』が刊行されました。つばさ文庫版アリスは、河合祥一郎が原著の言葉遊びを日本語に巧みに取り込み、okamaがかわいらしいイラストで物語に華を添えた、非常に楽しい本になっています。

 

 そんな中、和製アリスの決定版ともいうべき作品が登場しました。福音館書店のSFレーベル「ボクラノSF」初の書き下ろし作品として発表された『どろんころんど』です。今年の日本SF大賞の候補にもなり、高い評価を受けています。

 物語の内容は「アリス・イン・どろんこワールド」です。この作品の「アリス」は、少女型のロボットです。彼女の使命はカメ型の子守りロボット(レプリカのカメで「レプリカメ」)の万年1号の宣伝ショーをすることでした。ところが長い休止モードから目覚めた彼女が外に出てみると、なぜか人間はどこにもおらず、世界は泥の海になっていました。人間がいないことにはアリスは自分の使命を果たすことができません。アリスは人間を探すため、万年1号とともに泥だらけの世界で冒険を繰り広げます。

 どろんこワールドでどんな奇想天外な冒険が展開されるかについては、読んでのお楽しみということで詳しくは語りません。しかし、早くも10年代を代表するSF児童文学の傑作が登場したということだけは断言できます。

(yamada5)

『どろんころんど』

北野勇作・作 鈴木志保・画(福音館書店)2010年8月