きのうの夜、おとうさんがおそく帰った、そのわけは・・・・・・

 今年度、第48回野間児童文芸賞受賞作品です。

 夜なかなか帰ってこないおとうさんは、いったいどこでなにをしているんだろう。息子「あっくん」の疑問に、おとうさんがそのわけを説明する、という短編集です。

 

 野間児童文芸賞といえば、児童文学賞のなかでもっとも権威があるといわれています。過去には、松谷みよ子「小さいモモちゃん」(2回)、斎藤惇夫「ガンバとカワウソの冒険」(18回)、角野栄子「魔女の宅急便」(23回)など児童書の名作のほか、あさのあつこ 「バッテリー」(35回)、たつみや章「月神の統べる森で」(37回)、椰月美智子「しずかな日々」(45回)などYA世代向け作品への授賞も多く、幅広い児童書から選んでいます。

 「きのうの夜、」は小学校低学年向けですが、なかなか味わい深く、児童文学賞の受賞もなるほど、という印象の良書でした。

 各短編は、おとうさんが寝る前のあっくんに、きのう遅くなったわけを語りかける、というスタイルですすみます。あるときは帰り道にモグラやみみずに出会って地下深くまで穴掘りをし、あるときはくまがとばした帽子をとるために木登りをして、とおとうさんは動物たちに頼まれてさまざまな冒険をします。

 その冒険は、世界の危機を救い、家族や人々のくらしを守るために必要なことがわかり、一生懸命がんばるおとうさん。野球、木登り、ボート漕ぎなどで大活躍したお父さんは、こんどはあっくんと一緒にやろう、と話します。

 おそく帰った言い訳だったはずが、お父さんががんばる寓話になり、最後は子どもへの思いを伝えるという流れは、もしかしたら子どもよりお父さんがぐっと来そうです。「イクメン」が話題になるこの頃、お父さんが読み聞かせするにはぴったりの作品ではないでしょうか。働くお母さんに絶大な支持を誇る酒井駒子「よるくま」と、少しちかいものを感じました。

(神谷巻尾)

 

「きのうの夜、おとうさんがおそく帰った、そのわけは・・・・・・」

作/市川宣子 絵/はたこうしろう  ひさかたチャイルド 2010年4月