【特集:今年のベスト本】「ミラクル☆コミック3 ホントの世界をつくろう」

私のベスト1は、「ミラクル☆コミック3巻 ホントの世界をつくろう」です。

本作シリーズの主人公は、マンガ読みの両親のもとで育てられたサラブレットのオタク少女です。
ある日、憧れの漫画家先生にファンレターを書いたことがきっかけで、近くにある仕事場にお呼ばれされます。当日、お邪魔してみるとその日が連載マンガの締め切りで、アシスタントの人もお休みで人手が足りない。
あれよあれよと主人公がマンガ描きの手伝いをすることになって……と、ここまでは多少のツッコミどころはあろうと予想の範囲内だったのですが、そのあと、こちらの想像を上回るカオス展開に突入していきます。

これだけだと、ただドタバタでコメディタッチな内容の作品なのかと思われるかもしれませんが(実際そういった側面もありますが)、本作の真骨頂は「寓話性と社会風刺性」だと思っています。

主人公は両親の影響によりマンガ好きであることが災いし、なかなか気が合う友だちができません。そんな日々、自分に話しかけてくれたクラスメイトの女の子と仲良くなりたいと、マンガ修行を通じてコミュニケーションの仕方を学んでいきます。
この主人公をとりまく出来事が、実は現代の社会状況をかなり反映していて、娯楽作ではありますが「いまの子どもたちの持つ悩み」にかなりコミットしていると思えます。
また、作品の柱となってる“あるギミック”が社会学などでも言われている社会状況を的確に映していて、こちらでも感心させられました。

3巻で扱われているのは、主人公をいじめてきた「いじめっ子の心理」です。
実はこれも、有識者が指摘するようないじめっ子の心理分析とかなり合致していて、「児童文学」としてかなり良書なんじゃないかと唸らされました。
近年言われている「児童文学のライトノベル化」という流れにあって、イラストからしてライトノベルチックな作品なのですが、娯楽要素を担保しつつ、現代の子どもたちの問題を描くという「ライトノベル的児童文学」みたいな可能性を感じさせる作品だと思います。

騙されたと思って、読んでみて頂きたい一冊です。

(すがり)

「ミラクル☆コミック3 ホントの世界をつくろう」
松田朱夏・著 琴月綾 ・イラスト(岩崎書店/フォア文庫) 2010年10月