アナザー修学旅行

 第50回講談社児童文学新人賞受賞作品です。授賞は昨年ですが、今年6月に単行本として刊行されています。

 

 中学生活最大のイベント修学旅行に、さまざまな事情で参加できなかった6人が、学校に残って同じ教室で過ごす3日間の話です。そうか、宿泊行事を休むと学校に通うのか。人生でたった一度の修学旅行に行けず、見慣れないメンバーで教室にいるという状況、すごい萎えるだろうなあ。と、いやおうなしにお話にひきこまれる、絶妙な設定ですね。

 物語は、足の骨折で不参加になった佐和子の視点で進みます。

 佐和子は友達も多く、周りとの関係を何より気にかける、ごくフツーの今どきの中学生。だから、知らない子たちと一つの教室にいて、誰よりも気まずく、席の位置や、他人の会話にやけに敏感です。自分がどう見られてるかも気になってトイレで長々鏡を見てしまうとか、まだ友だちじゃないから下の名前で呼べない、とか、細かいところがいちいちリアル。これは同世代の子が読んだら楽しいでしょうね。「もう、ぞくぞくするくらい中学生なわけ。話すことも、話す言葉も、話し方も、考え方も、行動も……ぜんぶ!」と、金原瑞人氏も絶賛だそうです。

 留守番になったのにはそれぞれ理由があり、その事情と絡みながら6人(実は途中からもう1人増えます!)は少しずつ打ち解けていきます。人の少ない学校で、イタズラしたり、賭けをしたり、大胆なことしてみたり、いつもと違うことをしてはじけていく様子がさわやかです。

 登場人物が、不良(だけど秀才)、美少女、芸能人、あるいは恵まれない境遇にいる、など,揃い過ぎという気もしますが、フツーの子の視線で語られているので、意外とすんなり入り込めます。

 突出したことより、普通がすごく楽しいのが、中学時代なんだな、と思い出しました。

(神谷巻尾)

『アナザー修学旅行』

有沢佳映著 講談社 2010年6月