「つづきの図書館」

 今年度、第59回小学館児童出版文化賞受賞作品です。

 故郷に戻り、図書館分室に司書として勤めることになった40代バツイチの桃さん。そこにあらわれたのは「読んでくれた人のつづきが知りたい!」と、絵本の中から出てきたはだかの王様や、狼。彼らと一緒に人探しをしながら、自分自身の思い出もよみがえってくる。そんなファンタジーです。

 

 次々に絵本の登場人物が出てきて、それぞれの謎をとく、というミステリー仕立ての連作短編集のおもむきですが、最初「青い鳥文庫」のサイトで連載していたからでしょう。web連載発というものもあって当然な時代でしょうが、小学生はネットで小説を読むのか、というとどうなのでしょうか。

 

 書籍には書き下ろしも加わり、各話にちりばめられた仕掛けが結びつき、桃さんの物語としての結末を迎え、長編としての充実した読後感を味わえました。

 

 作者の柏葉幸子さんは、『霧のむこうのふしぎな町』が著名な、主要な児童文学賞総なめの、児童書ファンタジーの大御所作家、という印象があります。ちょっと変わり者ぞろいの登場人物、自然なファンタジー要素、物語のわくわく感などとても児童書らしく、「絵本の次に読む本」として子どもが入りやすい本なのでは、という気がします。変に教訓じみたり、感動的になりすぎたりしないところも好感が持てます。

 さて、賞のほうもちょっと調べてみました。小学館児童出版文化賞は、1952年に「小学館文学賞」「小学館絵画賞」として創設、1996年に統合して改称されました。

 

 選考対象は、1年間に発表された絵本、童話・文学、その他(ノンフィクション、図鑑など)と幅広く、過去の受賞作も、伊藤たかみ『ミカ!』(49回)、森絵都『DIVE!』(52回)、長谷川義史『ぼくがラーメンたべてるとき』(57回)、松岡達英『野遊びを楽しむ里山百年図鑑』(58回)など、さまざまなジャンルの作品が並んでいます。

 

 今回W授賞となった『ぶた にく』も豚が肉になるまでを追った、ノンフィクション写真絵本です。 賞のサイトには候補作が並んでいましたが、この1年の児童書関連の話題作、注目のテーマ一覧、といった様相でおもしろかったので掲載してみました。

 賞のサイトには候補作が並んでいましたが、この1年の児童書関連の話題作、注目のテーマ一覧、といった様相でおもしろかったので掲載してみました。

 

第59回小学館児童出版文化賞候補作

アンナの土星』益田ミリ(メディアファクトリー)

犬たちをおくる日―この命、灰になるために生まれてきたんじゃない』今西乃子(金の星社)

おいで、フクマル』くどうなおこ:作/ほてはまたかし:絵(小峰書店)

くさをはむ』おくはらゆめ(講談社)

小学館の図鑑NEO+くらべる図鑑』小学館

すみ鬼にげた』岩城範枝(福音館書店)

つづきの図書館』柏葉幸子(講談社)

ぶた にく』大西暢夫(幻冬舎エデュケーション)

雪だるまの雪子ちゃん』江國香織(偕成社)

 このなかでは『くらべる図鑑』が圧倒的に子どもに人気だったと思いますが、これには授賞しないんですね。「児童出版文化の向上に貢献」という賞の趣旨からすると、売上的には大変な貢献かと思いますが、文化、という点だとやはり教育的な面が重視される、ということでしょうか。 

(神谷巻尾)

『つづきの図書館』

柏葉幸子作 山本容子絵 講談社  2010年

 

 

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コメント: 2
  • #1

    catseye (水曜日, 20 7月 2011 12:12)

    小学校の学校図書館司書をしています。
    「つづきの図書館」を図書室に入れました。お話の世界が広がって、ネットサーフィンするように、次の読書への興味がわく本は、楽しいと思います。読むことは、ネットみたいにあっという間に次へ、とはいかない作業だけれど、先生ではない人に横から薦められる本は、案外手に取ってくれます。「おもしろい本なぁい?」の声は聞き逃さず、せっせとサクサク紹介したいので、こちらのホームページを読ませていただいております。

  • #2

    teensbooks (金曜日, 22 7月 2011 14:25)

    コメントありがとうございます!
    ご参考いただき恐縮です。
    面白い本をサクサク紹介できるようがんばります〜

    catseyeさまもおすすめの本がありましたら、是非お待ちしています!