5分でわかるアリエッティ——『小人の冒険シリーズ』入門

「借り暮らし」ってなに?

 

 鉛筆や裁縫用の針のような、ちょっとしたものがなくなってしまうことはありませんか?それは床下で暮らしている小人が持って行ったのかもしれません。「借り暮らし」とは、床下に住み人間のものを黙って拝借して生活している小人のことです。

 

『小人の冒険シリーズ』ってなに?


『小人の冒険シリーズ』は、借り暮らしの少女アリエッティを主人公としたイギリスの児童文学です。シリーズは全5巻です。

 

 『床下の小人たち』(1952年)

 『野に出た小人たち』(1955年)

 『川をくだる小人たち』(1959年)

 『空をとぶ小人たち』(1961年)

 『小人たちの新しい家』(1982年)

 

 作者のメアリー・ノートン(1903-1992)はロンドン生まれの作家です。『床下の小人たち』でイギリスの代表的な児童文学賞であるカーネギー賞を受賞しています。

 借り暮らしは人間に見つからないようにひっそりと生きてかなくてはなりません。しかし主人公のアリエッティは好奇心旺盛で奔放な性格で、人間と接触したり危険な行動を繰り返してしまいます。そのためアリエッティの一家は住んでいる家から出なければならない羽目に陥ります。シリーズでは主にこの脱出劇が語られています。

 

シリーズのみどころは?


 シリーズのみどころはふたつあります。

ひとつは冒険小説としてのおもしろさです。脱出劇が物語の軸なのですが、手を変え品を変えいろんなシチュエーションを楽しませてくれます。たとえば、下水道を通っての脱出劇、やかんを使った川下り。さらには、小人たちの手で気球をこしらえて、空の旅まで実現してしまいます。

 メアリー・ノートンは細部にこだわった緻密な描写で、こうしたスリリングな冒険を臨場感たっぷりに盛り上げています。冒険小説としてのおもしろさは特上といって間違いありません。

 

 もうひとつのポイントは、作品の複雑な構造です。この作品はメイおばさんがケイトという少女に語って聞かせた話ということになっているのですが、実際の語り手はメイおばさんでもケイトでもない別人です。さらに物語の当事者はメイおばさんではなく、そのおとうと(おとこのこ)です。

 こうしたひねくれた構造を提示することによって、メアリー・ノートンは『床下の小人たち』のラスト一行にとんでもない爆弾を仕込んでいます。英国ファンタジー児童文学史上もっとも後味の悪い結末との呼び声も高いこの作品、その結末をばらすことなどとてもできないので、ぜひ手にとって確認してみてください。

      (yamada5)

『小人の冒険シリーズ』

メアリー・ノートン著 林容吉、猪熊葉子訳

岩波少年文庫