精霊の守り人

 こんにちは。管理人の巻尾です。まず1冊というのが予想以上に難しく、悩みましたが思い切って選びました。

  『精霊の守り人』に始まる「守り人」シリーズは、異世界を舞台に、精霊の卵を産みつけられた皇子チャグムと、彼を守る短槍使いの女用心棒バルサを軸に、壮大なスケールで描かれた物語。日本を代表するファンタジーと称され、数々の児童文学賞を受賞しています。1996年に偕成社から児童書として刊行され、こちらは全10巻がすでに完結。2007年にNHK BS2でアニメ化、同年に新潮文庫になり、現在中盤の5,6巻まで刊行と、児童書の枠を超えて人気が再燃といった感があります。

 

 「守り人」の最大の魅力は、なんといっても主人公の女用心棒、バルサです。

 まず驚いたのが、バルサの描写。「顔にすでに小じわが見える」30歳のヒロインなのですよ。シリーズが進むにつれ、最後は確か37歳。独身のアラフォーです。普通ファンタジーで、強い女性が主人公なら、若くて(というか少女)美人(というよりかわいい)、がお約束かと思いますが、それを軽く裏切ってあまりあるバルサの活躍には、子ども以上にきっと大人の読者も引き込まれるでしょう。

 

 幼なじみの薬草師タンダは、傷を負ったバルサを献身的に介抱し、料理も上手な、年下男子。タンダの師匠、呪術師トロガイは70歳のスーパーお婆ちゃん、と、ステレオタイプではない登場人物たちが、とてもいい。文庫最新刊『神の守り人』にも、数奇な運命を背負う兄弟、信頼の厚い王、不穏な動きをする王の使いなど、人物造形がはっきりして魅力的な人々が物語の中で自然に立ち動いている印象です。

 

 それからもうひとつ、登場するものの名称や、ディテールが凝っているのも面白いところ。地名や民族、国ごとの言語、動植物や食べ物の名前など、詳しく記され、使い分けられています。特に料理の名前とその描写はすばらしく、「あつあつのバム(無発酵のパン)に、たっぷりのラ(バター)」とか、「ジャイという辛い実の粉とナライという果実の甘い果肉をつけこんだ鳥肉」を飯にまぶした「ノギ屋の鳥飯」など、印象的な食事シーンがたくさんあるのです。

 

 そんな守り人メシファンに向けてか、上橋作品に出てくる料理を再現した本『タンダの食卓』も昨年刊行されました。上橋さんの児童書体験や、作品中の料理についてのエッセイも収録されており、児童書読み心をくすぐる内容です。


 食べ物も人物も、国も時代も、ファンタジーながら設定がしっかりしていて詳細な部分にぬかりはなく、どことも限定されていない場所に連れて行ってくれる、という児童書を読んだ感いっぱいになれる本です。

(神谷巻尾)   

 

「精霊の守り人シリーズ」上橋菜穂子著

偕成社ワンダーランド新潮文庫